もちもちおねいまんと4枚の絵

もちはもちや おねいまんはもちもちおねいまんです

二つの季節

日本には四季があるというが、わたしと妹がの子どもの頃は二つの季節しかなかったと記憶している。そう、それはまるでインドネシアの雨季と乾季のようにくっきりとある日を境に分かれるのだった。わたしたちは「田んぼの季節とプログラミングの季節」と密かに呼んでいる。


春先から秋も深まる頃まで父は朝から晩まで稲作に精を出していた。わたしたちは稲と共に日に焼けて、案山子にもたれながら実りを待った。そして秋も深まる頃から春先までの父は家で下請けのプログラミングの仕事をするのだった。
時々わたしが、うちは農家だからねー・・・、と言うと妹はいつも、「ううん、お父さんは二束のわらじをはいたプログラマなの。なのでうちは農家じゃない。」と訂正した。傍らで黙ってコンピューターを見つめ続けていた父は「おじいさんは冬になると東京に焼き芋を売りにいきました。ひいおじいさんは蓑や笠をわらで編んで市に持って行って売りました。ひいひいおじいさんは雪山で狩をしていました。」とつぶやくように昔話をするのだった。すると決まってわたしたちは「じゃあひいひいひいおじいさんは?」「ひいひいひいひいひいーおじいさんはなにをしていたの?」とキーボード上で忙しく動く手を見ながら、小さな声で騒ぐのだった。


今、妹はハッカーになって世界中を飛び回っている。わたしはヒッチハイカーになった。世界中の農家を旅しながら田植えの手伝いをする毎日。目の前に広がるのはミャンマーの青空、手に取った一本の苗。まじまじと見た自分の手が父親の手に良く似ていた。

・・・