深い海へ潜ってから、再び輝く水面へ浮かんで戻る。それを何度も何度でも。眠っているようで起きている。夢に現実と同じくらいの確かさがある。あいまいな記憶は定着し、乱れた物事が引き潮にのって整えられてゆく。故郷ではいつもレム睡眠の波形。
1・2・3・4・5と一粒ずつ口に入れる。6・7・8・9・10。11・12・13・14・15。16・17・18・19・20。蘇るのである、なんとなくしかしはっきりと。一年一粒ずつの色合いを感じながら歯ですり潰す。感じる。胸のいたみ。Count fortyからの無味乾燥な味わい。
年を越して晴天の続く冬空に映える木々の枝は白く一本一本がくっきりとしている。歳を取る美しさは、こういった包みせぬ状態へむかうことなのかもしれないと見上げながら歩き、昼なお暗い森へ差し掛かった。むこうより駆けくるものあり。まっしぐらにおねいまんの足首を噛む。こいぬが あらわれた・たたかう・にげる?
今日は一年の時間とお金をうまく都合して実現した観劇だ。この椅子も音楽も自分が自分にあきらめず用意したものである。カーテンコールの時、となりのおねえさんがせいいっぱい拍手をして一瞬止めて、また一度拍手をしてを繰り返していた。はんかちで目をふいているのだなとわかった。そういえばさっき右隣のおねえさんも眼鏡をはずしていたなと気づいて、わたしも泣いた。