もちもちおねいまんと4枚の絵

もちはもちや おねいまんはもちもちおねいまんです

プレ・バレンタイン

多くの女子にとって節分の日は楽しみでもあり憂鬱でもある。A子の机の上には朝から太巻きの奉納ピラミッドが出来ている。その太巻きはもちろん文字通り太かったり・・・あるいは細かったり長かったり短かったりしている。
‘彼女の恵方とわたしの恵方は同じ。わかっているのわかっているけれど わたしにはないの・・・いっぽんもない・・・’
数学のノートのすみに太巻きポエムを書きながら思う。お昼になればA子は必ずある方位を向きながら選りすぐりの一本にかぶりつくのだろう。
チャイムが鳴り午前の授業が終わる。予想通り彼女の恵方は憧れの彼の席だった。彼女は教室中の男子のどよめきの中で、小さな口で大きなそのいっぽんを食べ尽くし押し黙る女子たちに言った。「ねえ良かったらこれ分けて食べちゃってくれない?・・・日持ちしないから。」悪いよ・いいよの押し問答を形どおり済ませた後、女子たちはめいめいに一本を取って食べた。なんでもない顔で食べた。何気なく取った中身はたまご・かにかま・かんぴょう・・・そしてピンク色のでんぶ・・といういかにもたこにもオーソドックスな海苔巻きだった。わたしはむせながらも食べつくした。目を閉じて地球の裏側リオデジャネイロの方位に向かって。

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