小学校低学年で50メートル泳げてしまうI君はスイミングスクールに通っていて人より上達も早いのだった。だから、夏プールの季節になるといつも模範演技でクロールを披露することになる。先生の笛の音でプールサイドにずらっと整列するわたしたちはただ彼の泳ぎを上から目で追うように言われるのだった。I君が二、三回水をかいて息を継ぐ、二、三回水をかいて息を継ぐ・・・・そのたびにI君の顔がぷはーっとあがってくるのだった。充血した目と引いた顎、切実なあの息。*1
思い出しながら今深呼吸してみる。
顔が出るたび本当は笑いたかったけど、笑えなかったなあ*2・・・みんなしんと見とれていたもの。
やっと、ふふふと笑う。ふ・・・。冬だ。
・・・